林業における刈払機の使い方ってどんなでしょう?
田んぼの畦や畑の周りの草刈り作業であれば、特に教育を受けること無くやっている方が多いと思いますが、林業の場合は山地という危険な場所で実施する為、ちょっとしたコツが多くあります。
刈払機での作業を、安全かつ効率的に行うコツをまとめました。
林業での刈払機作業の特徴としては、傾斜地(山地)で行うと言うことが挙げられると思います。傾斜地では、足元が特に不安定なので、安全に関しては一層の注意が必要です。
基本的な刈払機の使い方と共に、林業特有の刈払機の使い方を合わせて説明します。
今回は下刈編です。
除伐についてはこちらの記事をご覧下さい。
下刈り作業の基本
基本動作と姿勢
基本姿勢について、刈払機取扱作業者の安全衛生教育のテキストには、
姿勢は上体をまっすぐ起こし、両足を肩幅よりやや広めに開き、右足を半歩前に出します。
とあります。
また大前提として、刈刃の高さが刈高(神奈川県発注作業だと、下刈り高さは10cm)と一致しないといけません。
ちなみに、伸長183cm私がこれに合わせようとすると、少々きついのです。肩バンドを調整して丁度良い位置を探すも、どうしてもうまく行かず、腰を少し曲げるか、膝を落とすかの二択を迫られます。
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- 上体がまっすぐに起きる位置に肩バンドを合わせると、グリップ位置が下すぎて掴めない。無理に掴もうとすると、どうしても腰が折れてしまう。
- グリップ位置に肩バンドを合わせると、逆に刈刃が高くなってしまいます。
仕方がないので、「1.」の方で作業をしていますが、結構腰に来ます。もっと膝を柔らかくして腰を落とさないといけないのでしょうね。
前進について、テキストの記載は
刈り払った分だけ、右足からすり足で行います。
とあります。
また、左右方向の移動は、
右には右足から、左には左足から行います。
です。
すり足で進む事で、傾斜地でも体が安定するという事ですね。
刈払機の基本操作
「刈り幅は広くて1.5m、右から左に振り、草を払った分だけ前に進みます。」
刈払機取扱作業者の安全衛生教育のテキストの記載です。
しかし、実際の現場はそんな悠長な事は言っていられず、左から右、つまり往復で草を刈ります。その場合はキックバックが発生しやすいという事を十分頭に入れないといけません。
キックバックが発生しやすい位置は、刈刃を上から見て12時〜3時の範囲です。この位置で灌木や伐根などの硬いものを切らないよう、十分注意しましょう。
刈払機を振るのは腕ではなく、腰を使って振ります。腕を使って振り回すと、腕が凄く疲れます。腰を使えば腕はとても楽になりますよ。
刈刃の回転数は無理に上げる必要は無く、低回転でも十分刈れます。その方が燃費が良く、キックバックも発生しづらくなります。
とは言え、回転を下げすぎると草が挟まったり、硬い草や木、笹などは切れないので都度調整しながら刈っていきます。このあたりは経験を積んでコツを掴んで行きましょう。
刈刃は斜面に対して水平にします。考えてみれば当たり前な事ですが、忘れてしまいがちです。急傾斜地では特に気をつけないといけないですね。
刈高は的確に
神奈川県発注の下刈りの刈高は10cmが基準ですが、平地に近い環境であれば、もっと低くするべきです。
刈刃の固定ボルトが地面に擦る位の高さで刈って良いと思います。
刈り残しはダメですよ
草は左に倒れます。常に左に倒し続けられるような刈り方が出来れば、作業は楽ですし、刈り残しも防ぎやすくなります。
今刈っている場所だけを見るのでは無く、全体を見渡してどの様なルートで刈っていくのかをイメージしながら作業すると刈り残しが減らせると思います。
安全作業のコツ
安全確認は万全に
作業者は刈払機の刈刃に常に気を配ってないといけません。
他の作業者に呼ばれて目を離す時は、刈刃の回転が完全に止まった事確認してから、次の行動を起こすようにします。
刈刃を止めるのは草ブレーキを使用します。草ブレーキとは、刈刃を刈り払った草や草むらに、上から押し当ててその回転を止める方法です。
注意点として、地面に石が混じっているような場所で草ブレーキをかけてはいけません。石を切ってしまうと、刈刃の歯を簡単に傷めてしまいます。
急傾斜地では、刈払機は常に斜面の下側になるように操作をします。これは万が一作業中にバランスを崩した時でも、刈払機が上から降ってくる事を避けるためです。
この場合、左側が谷側になる時は、刈払機を左側に持ち替えて作業をします。そうしないと、往復で作業が出来ません。
作業時は保護メガネでは顔が守れませんので、必ずフェイスガード付きのヘルメットを着用します。刈刃に当たった石などが跳ねて顔や目に当たるのを防ぐためです。
作業中はフェイスガードを下ろし忘れないよう、習慣化させないといけませんよ。
他の作業員と近接作業になる時は、他の作業者とのコミュニケーションが大事です。
アイコンタクトや阿吽の呼吸で刈る場所を決めていると、誤解があった時にとても危険です。
必ず声掛けやジェスチャーで意思を伝える事が重要です。
足元を要チェック!
下刈り現場はとても不安定です。急傾斜だったり、枝や石が転がっていたり、土留の際が分かりにくかったりします。足場を常に気にしながら作業をすることが重要です。
特に土留の際は分かりづらく、私は枝と落ち葉が溜まっただけの地面に載ってしまい、危うく転落しそうになった事もあります。
このような場所では、注意深く足元の状況を観察をして、慎重に足場を確保する必要がありますね。
危険区域はここ!
刈払機取扱作業者の安全衛生教育のテキストでは、
作業者の半径5mは危険区域
立ち入り禁止とあります。
また、
作業者同士の間隔は15m以上空ける
とあります。
狭い現場だとこれを完全に守るのは難しいかも知れませんが、近くに別の作業者が居る時は特に気をつけないといけません。
場合によっては無理にそこで作業を続けず、別の場所に移動する事も選択肢に入れるべきだです。
また、同時に複数人で作業する場合は距離を離してスタートする事で、安全な距離が保てます。距離が近くなったら、どちらかが反対に進むというように作業を進めましょう。
立木や伐根への注意
刈刃の12時〜3時の間は、キックバックが発生する位置です。
ここが立木や灌木、伐根などの硬いものに当たると、キックバックが発生するので、十分注意が必要です。
灌木や伐根は草の下に埋もれている事があるので、高い草を刈る時は2度刈り、3度刈りをして草の下の状況を常に気にしながら刈り込みましょう。
目立てをして、作業を効率的に!
現在私が下刈りで使用しているのは、ツムラの笹刈刃です。
笹刈刃はチップソーと違い、目立てが必要です。丸一日作業をすれば刃先が丸まって、切れ味が落ちて来ますので、最低でも1日1回は必ず目立てを行います。
上手に目立てした刈刃は、驚くほどよく切れて、そして作業も楽に効率的に進みます。上手な目立てを、必ずマスターしましょう。
ツムラの標準的な笹刈刃の目立ては、丸ヤスリ(私の笹刈刃では7.9mm)を使い、45°の角度で研ぎます。
笹刈刃の目立てについては、こちらのサイトで詳しく書かれています。
刈刃を傷めない為に、注意する事が2点あります。
- 使用しない時に地面に付けてはいけない。
- 刈刃で地面や石を切ってはいけない。
これは、石に刃先が当たると、折角目立てした刈刃の歯がこぼれてしまうからです。
まとめ
刈払機で作業を初めた最初の頃って、正直言って最初は全然上手く刈れないと思います。私もそうでした。
身体がガチガチ、姿勢も良くわからないまま作業を進めてしまいがちです。
もし周りに先輩や、研修先の講師がいたら作業を見てもらって適切なアドバイスをもらいましょう。
その道の先達に客観的なアドバイスをもらうのは上達の近道ですし、技術が上がればおのずと安全な作業が出来るようになります。
作業に慣れてきたら、安全には一層注意をしましょうね。
刈払機を使ったもう一つの作業、除伐についてはこちらの記事をご覧下さい。
以下の道具と技は刈払機が特集されているおすすめの書籍です。
林業で刈払機の仕事をされている方にはとても有用な情報が沢山書かれていますので、是非ご覧になってください。
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