【林業】除伐って何?→草刈り機で灌木を刈っていく作業を安全に解説

除伐とは、林分のスギ、ヒノキ等の目的外の樹種(雑木、灌木)を刈払機で取り除いていく作業の事です。

除伐は林内整理伐とも呼ばれます。

除伐の主な目的は、針葉樹などの育成対象樹木の成長を促進したり、その後の作業(例えば間伐)をやり易くする目的で実施します。

 

刈払機で木を切るなんて、林業関係の人にはちょっと考えられないかも知れませんが、刈払機につけているチップソーや笹刈刃は、大工が使っている電動丸ノコの刃と変わらない性能を持っていますので、実は小さな木を切るなんてお手の物なんです。

 

このようなアオキが茂った森を除伐すると、

 

 

こんな感じに、スッキリと下層植生を整理出来ます。

 

除伐で特に重要なのは3つです。

・姿勢は、足を肩幅よりもやや広く開き、腰を落とす。
・枝を先に切り落とす方が、後々楽に作業が出来る。
・笹刈刃の目立ては、先端を触ると痛いくらい研ぐ。

 

それでは、人工林内に密生している下層植生の雑木を、刈払機で刈払う作業を説明していきますね。

 

ちなみに下刈については、こちらの記事をどうぞ。

林業では刈払機をどうやって使うの?安全で効率的な使用方法【下刈編】
林業での刈払機の作業は、地という危険な場所で実施する為、ちょっとしたコツが多くあります。作業を安全かつ効率的に行うコツをまとめました。傾斜地では足元が特に不安定なので、安全に関しては一層の注意が必要です。基本的な刈払機の使い方と共に、林業特有の刈払機の使い方を合わせて説明します。

 

除伐の基本

基本動作と姿勢

刈払機は常に谷側になるように構えます。例えば、進行方向に対して左側が谷になる斜面であれば、左脇に刈払機を持ちます。こうする事により、万が一、転倒したに刈払機が上から降ってくる事を回避します。

刈払う時の姿勢は、両足を肩幅よりやや広く開き、膝を軽く曲げて腰をしっかり落とします。こうする事で、斜面での姿勢が安定します。膝が伸び切っていたり、足が揃っているととても不安定で、少しのバランス変化で簡単に転倒していまいます。

刈払は斜面の下側から開始し、等高線に沿って刈って行きます。刈り払った灌木は斜面の谷側に落としていきます。こうする事で、刈り落とした枝等が次の作業の邪魔になりません

 

刈払機の基本的な使い方

刈払機で刈払う方向は、効率を考慮して右でも左でも行いますが、右に刈り払う場合はキックバックを防止するため、12時〜3時の方向は使用しないよう注意します。

 

また、除伐の際は、飛散防止カバーを10cm程後ろにずらします。これは刈り払った枝がカバーと刈刃の間に詰まったり、それによってカバーが破損するのを防止する為です。(上の写真はずらしてませんね。)

 

 

鉈(なた)、鋸(のこぎり)の取り扱い

使用する機会は少ないですが、鉈と鋸の基本的な使用方法についても書いておきます。

 

鉈は切れ味が鋭く、とても危険な刃物です。振り下ろした軌跡上に足が来ないように十分注意します。切る雑木に対して鉈を右に持ち雑木に対して鋭角に振り下ろします。

慣れないうちは一回で切ろうとせず、数回に分けて切る事が事故を防ぐコツです。

 

鋸は基本的に引いて切りますが、最初の取っ掛かりを付ける時は、鋸を押して傷跡を付けることで、切り始めが安定します。

切る時は対象の雑木をしっかり固定します。安定しないと力が歯に伝わらず切り進める事が出来ません。

 

刈り高はなるべく低く

除伐の刈高は極力低くします。

これは除伐の主目的として低くする事は勿論ですが、伐根が高くなると、作業時につまずいたりして邪魔だからです。

但し、刈刃を低くすると石を切りやすくなるので注意が必要です。

 

また、刈高をいくら低く切っても、除伐した枝がうず高く積もっていては、今後の作業の邪魔になります。

枝は適切な大きさに切り、かさを低くしておきましょう。

その為には、根元を切り倒した後に枝を切るよりも、根元を切り倒す前に枝をある程度細かく切り、その後に根本を切った方が移動が少なく済みます。

その方が、対象の木が固定されているので安定して切れるので、効率的です。

 

雑木を刈る際は、極力効率的に切り落とす事を考えましょう。枝の上から歯の往復運動で、適正な大きさに切って行くのが効率的なので、初めのうちは1つ1つ考えながら切る事を心がけるのが大切です。

 

刈り残しはダメ!

極力刈り残しが無いように、周囲を見回しながら作業をしますが、隣の作業員との間などは刈り残しが発生しがちです。

持ち場の除伐が粗方終了したら、周囲を見回し刈り残しを確認します。

刈り残しがあったら、順次刈っていきますが、無駄にあるき回り体力を消耗しないよう、面倒でも斜面の低い所から等高線に沿って歩いて、刈り残しを処理していきましょう。

 

安全作業のコツ

安全な作業ルートを確認しよう

刈り始める前に必ず下見をして、危険箇所や人員配置を確認します。

所斜面では、別作業員と上下作業にならないよう、同一等高線上に作業員を配置します。隣の作業員と近づいた場合は、無理に持ち場を刈ろうとせず、折り返して別の場所に進みます。

 

足元、手元は要チェック!

急斜面では、足場が確実である事を一歩一歩確かめながら作業をします。特に地面が脆く急な斜面では、刈り払った雑木の伐根や、立木の根本も利用しながら足場を確保しましょう。

 

周囲の確認、声掛けの徹底

作業員とのコミュニケーションを確実に行うことが重要です。指差しや声掛けで自分の意思を伝え、理解してもらう事を心がけましょう。

安全に作業する為、声掛けを躊躇してはいけません。作業員同士に理解の齟齬があると、事故の原因となるからです。

切っている木だけに集中せず、周りの作業者や、次の樹木の状況も意識に入れる事も重要です。

 

除伐は目立に加えて、アサリ付けをしよう!

私は、除伐では笹刈刃を使用しています。愛用は、ツムラの笹刈刃です。

笹刈刃はチップソーと違って目立てが必要なので、一見すると面倒ですが、利点もあります。笹刈刃は切れ味が落ちても目立を行う事で切れ味が回復するのが利点です。

丸一日作業をすれば刃先が丸まって、切れ味が落ちて来ますので、最低でも1日1回は必ず目立てを行います。

ツムラの標準的な笹刈刃の目立ては、丸ヤスリ(私の笹刈刃では7.9mm)を使い、45°の角度で研ぎます。

上手に目立てした刈刃は、驚くほどよく切れます。

目立てが上手くいくと、作業が楽になり、結果的に効率が上がます。また疲労も低減出来ることが実感出来ます。

目立ては必ずマスターしましょう。

 

ツムラの標準的な笹刈刃の目立ては、丸ヤスリ(私の笹刈刃では7.9mm)を使い、45°の角度で研ぎます。

 

笹刈刃の目立てについては、こちらのサイトで詳しく書かれています。

笹刈刃(笹刃)の目立て、研ぎ方(動画追加、追記アリ) - 出来杉計画
ネットに笹刃の目立てネタがあまり落ちてないということを聞きました。これはつま...

 

 

笹刈刃で除伐する場合、ノコ道を作る為に、アサリ割器で歯にアサリを付ける必要があります。

 

アサリ付けをする時は、刃先を割らないように十分注意しましょう。一気に力を込めず、ゆっくり根本の方から起こすのがコツです。

アサリ割器を正しい使い方で行うと無理なくアサリ分けが出来ますよ。

 

安全に次工程(間伐作業や測量)が出来る状態になってる?

繰り返しになりますが、刈高をいくら低く切っても、除伐した枝がうず高く積もっていては、今後の作業の邪魔になりますので、枝は適切な大きさに切り、かさを低くしておく必要があります。

その為には、根本を切り倒した後に枝を切るよりも、根本を切り倒す前に枝をある程度細かく切り、その後に根本を切った方が移動が少なく済みます。

また対象の木が固定されているので、安定して切れるので効率的です。

そして、刈り払った雑木の幹や枝は、極力等高線に沿って横向きになるようにします。こうする事で、幹や枝が斜面から滑り落ちる事を防止出来ます。

 

まとめ

重要な事、3つ

最後にまとめです。重要な事なので、繰り返します。除伐作業のコツは以下の3つです。

 

・姿勢は、足を肩幅よりもやや広く開き、腰を落とす。
・枝を先に切り落とす方が、後々楽に作業が出来る。
・笹刈刃の目立ては、先端を触ると痛いくらい研ぐ。

 

 

最初のうちは作業が上手く出来ないかも知れませんが、ただ闇雲に作業を繰り返すので無く、このサイトや教科書等を良く確認しながら作業をすると、日に日に上手になって行くと思いますよ。

 

刈払機を使ったもう一つの林業の作業、下刈についてはこちらの記事をどうぞ。

林業では刈払機をどうやって使うの?安全で効率的な使用方法【下刈編】
林業での刈払機の作業は、地という危険な場所で実施する為、ちょっとしたコツが多くあります。作業を安全かつ効率的に行うコツをまとめました。傾斜地では足元が特に不安定なので、安全に関しては一層の注意が必要です。基本的な刈払機の使い方と共に、林業特有の刈払機の使い方を合わせて説明します。

 

以下の道具と技は刈払機が特集されているおすすめの書籍です。

林業で刈払機の仕事をされている方にはとても有用な情報が沢山書かれていますので、是非ご覧になってください。

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