やんばるへ旅行するにあたって、是非とも見ておきたい野鳥をまとめました。
はじめに
リストは主にやんばるの森 輝く沖縄のいきものたち 写真=久高将和 日本野鳥の会やんばる支部 編に掲載されている「やんばるの鳥類リスト」から、私が見たいと思う種を独断と偏見で記載しました(一部追記あり)。
大型本で写真集のような装丁。フィルムカメラ時代に見事な野鳥の生態を撮っていた人たちの技術にも驚く。
各種の解説は♪鳥くんの比べて識別! 野鳥図鑑670 第4版を参考にしています。荷物をなるべく軽くしたいので図鑑は持ち歩かない代わりに、識別ポイントを丁寧めに記載したつもりです。
鳥の識別を本気でやるならこれ。最新の第4版は掲載種と写真数が増えて更に充実している。
ここに挙げた種は関東では見られないか、あまり見られない種が主です。野鳥趣味を始めてから初めての沖縄行きという事もあり、未見の種ばかり。実はリストをまとめているだけでもテンション爆上がりでした。
未見の種ばかりという事で、私には手持ちの写真がありません。という事で写真の殆どはWikipediaより借用・引用しました。旅行中に見事写真が撮れた暁には自前の写真に更新したいと思います(絶対撮りたい!)。
留鳥(林内)
ノグチゲラ
沖縄本島北部のスダジイを中心とした照葉樹の森林にのみ生息する。一属一種の希少な種で沖縄県の「県の鳥」。体長30cmの中型のキツツキ。
営巣する樹種はスダジイ、タブノキ、オキナワウラジロガシ、センダンなどでスダジイが8〜9割を占める。木の実を好む。
「キョ」と鳴くが、沖縄本島には同様に鳴くアカゲラ、オオアカゲラ、アオゲラは生息しないので、この声による識別は容易と考えられる。
生息数は100〜200羽程度と考えられている。産卵数が最大3個と極端に少ないのと、生息域がやんばる地方の森林に限られるのが要因か。
ノグチゲラの和名は学名Sapheopipo noguchiiの小種名にちなむ。新種記載した鳥類学者のシーボームが、標本個体を採取した野口某氏(野口源之助と考えられている)から小種名をnogutiiと献名した。また、英名のPryer’s woodpeckerは標本を提供したプライヤー氏にちなむ。
蛇足であるが、私は個人名を種名に採用する考えは好みでない。新種を発見した行為を、まるで自然を征服したかのように表現している感じがするからだ。種はヒトが発見する前から(きっと多くはヒトの登場以前から)存在している。本当に発見した種に敬意を評するならば、その種を象徴するような名にするべきではないだろうか。見た目や生態、生息域などにちなんだ名前こそしっくり来るように思う。ノグチゲラであれば、ヤンバルゲラやウスアカゲラなど他にしっくりくる名前がありそうに思えてならない。
アカヒゲ(亜種ホントウアカヒゲ)
薄暗く湿った林内に生息する。
「ヒーリョンリョンリョン、チョチョチョチョ」と囀る。地鳴きは「ツイ、ヒー」。
アカヒゲの学名はLarvivora komadori。
コマドリの学名はLarvivora akahige。
学名の小種名が和名と逆になっているのは、両種の標本をシーボルトから受け取った生物学者テミンクとランギアが、新種記載する際に聞き違えてしまった為と考えられている(オイオイ)。
ヤンバルクイナ
1981年に新種として発見され、半世紀ぶりの新種発見と世間を賑わした。実は発見以前から山で仕事をする人たちの間では知られていて、ヤマドゥイ(山の鳥)とか、地上を素早く動き回る様からアガチ(せっかちな鳥)と呼ばれていた。
やんばる地方にわずかに生息し、飛べないと言われている。夜間は木に登って眠る。平均して樹高11m、胸高直径30cmの太くて安定した木をねぐらとして利用する。枯れ木も2割程含まれる。
主に朝夕に「クエー、キャー」と叫ぶように鳴く。「キョ、キョ、キョ、キョッ・・・・」という声はウグイスの谷渡りに似る。
アマミヤマシギ
森林、湿った林道に生息する。「ブワブワ」「ジェジェ」と鳴く。
スダジイの林内を歩いていると時折足元の草むらから突然飛び立つ事がある。越冬期はヤマシギと生息範囲が被っているので要注意。アマミヤマシギは上へまっすぐにのんびり飛び立ち、飛び立ち直後に頻繁に鳴く。ヤマシギは斜めに素早く飛び立つ。
頭の黒い横斑はヤマシギほど太くなく目立たない。目の周囲がピンク色に裸出している。足がヤマシギより明らかに長い。
カラスバト
タブやシイの大木のあるような暗い森や岩礁にも生息する。朝夕は電線や枯れ木によく止まる。
「ウーウー」「プルルルルル」と舌を巻くように鳴く。
頭〜胸にかけて緑〜紫の構造色。それ以外は全身黒色に見える。足はピンク色。
ズアカアオバト(亜種(リュウキュウ)ズアカアオバト)
主に林に生息し、朝夕や雨天時には電線に止まる姿が見られる。
「オーアオー」と低音の口笛のように鳴く。
アオバトのような頭の黄色味は無い。下腹はアオバトのように白くない。オスの雨覆いは赤紫色。メスは全身緑色。下尾筒の緑色の軸斑はアオバトより太い。
尚、頭が赤いのは台湾で繁殖する本種の基亜種であるタイワンズアカアオバトのオスだけで、日本に生息する亜種ズアカアオバトと亜種チュウダイズアカアオバトの頭は赤くない(ややこしい)。
キジバト(亜種リュウキュウキジバト)
九州以北に生息する亜種キジバトより眼の周囲の赤みや嘴基部のピンク色が顕著な傾向がある。一般的に亜種キジバトよりやや小さく、暗色〜ピンクがかるが個体差がある。
リュウキュウコノハズク
セレベスコノハズクと呼ばれる事もある。
平地から山地の林に広く生息する。「コホッ、コホッ」と鳴く。
虹彩は黄色。趾に羽毛は無い。コノハズクに似るが生息地で判別できる(渡りの時期は要注意)。
オオコノハズク(亜種リュウキュウオオコノハズク)
平地から山地の雑木林などに生息する。木の洞をねぐらとする。
オスは「ウォッ、ウォッ」「ポポポポポ」(ツツドリに似るが音節は無い)とゆっくり鳴く。メスは「ミャオ」と鳴く。
虹彩は橙色。亜種リュウキュウオオコノハズクには趾に羽毛は無い。
アオバズク(亜種リュウキュウアオバズク)
市街地や神社にある大木などに生息する。市街地や都市部では該当に集まる昆虫を捕食する。
「ホーホー」とアルトリコーダーの「ソ」に似た声で鳴く。
亜種アオバズクとの野外識別は困難。
留鳥(水辺・農地)
リュウキュウヨシゴイ
アシ原や水田、河川などに生息する。
飛び立つときは「ゴゴゴゴ、グガガガ」と鳴き、朝夕には「アッアッアッアッ」と鶏のように鳴く。
虹彩の後方に黒斑があることでヨシゴイと区別できる。オスの上面は無斑で全体に赤紫褐色、下面中央に1本の縦斑がある。メスの上面は白斑が散在する。下面には明瞭な縦斑が数本入る。
クロサギ
岩礁、サンゴ礁海岸、河口などに生息する。
全身が黒いものは間違いが無いが白色型は注意が必要。全身が白く黒斑が点在する中間型もいる。虹彩は黄〜橙色。嘴は黄〜黒色まで変異がある。足は黄〜黄緑色が普通だが、黒っぽい個体もいる。他の白サギ類より足が短い。
ミフウズラ
体長14-18cmと小さくジョウビタキ〜イソヒヨドリ程度。ウズラは20cm。
サトウキビ畑や農耕地、乾いた赤土の荒れ地などに生息する。
「ブーゥ、ブーゥ・・・」と続けて鳴く。
一妻多夫。メスは喉〜胸が黒色。
ヒクイナ(亜種リュウキュウヒクイナ)
琉球諸島には亜種リュウキュウヒクイナが留鳥として生息し、亜種ヒクイナも越冬していると思われる。
湿地や水田、アシ原などの身を隠す場所にある小さな河川敷、沼岸などに生息する。
春〜夏の夕方にかけて「キョッ、キョッ、キョッ、キョッ」と独特の声で鳴く。
亜種リュウキュウヒクイナは亜種ヒクイナより羽色が暗いが分かりづらい。
シロハナクイナ
池、河川、マングローブ林、湿地、水田、畑、山地、草原などに生息する。他のクイナ類に比べて乾燥地でも生活するようである。
「クルルワ、クルルワ」「コッ、コッ、コッ」と独特の声で鳴く。
リュウキュウツバメ
近隣に農耕地がある人家周辺などに生息する。
「ジュジュジュ」と鳴く。
額・喉〜胸は赤褐色。胸の境界線は不明瞭。下尾筒が鱗模様に見える。燕尾はイワツバメより深く、ツバメより浅い。
コシジロキンパラ
写真なし(Wikipediaでの掲載なし)
十姉妹の原種。移入種。先島諸島での記録がないので自然渡来ではないとされる。
農耕地、草地、アシ原などに生息する。
シマキンパラより濁った「チー、ジュー」腰は白色。
ハシブトガラス(亜種リュウキュウハシブトガラス)
「カー」と鳴く。
亜種ハシブトガラスよりやや小さい。亜種リュウキュウハシブトガラスは紫色光沢が強い。
冬鳥・旅鳥
ササゴイ
関東では夏鳥。西日本、南西諸島では少数が越冬する。
河川、湖沼などに生息する。
「キュウ」と鳴く。
アマサギ
関東では夏鳥。南西諸島では少数が越冬する。
牧場、農耕地、草地などに生息する。バッタや変えるを好み、広い水辺に出ることは稀。
「ゴワー」と鳴く。
嘴は黄色。冬羽は全身が白い。アマサギ・コサギ・チュウサギ・ダイサギの中で最も小さく、頸が短く、足や嘴も短い。
サシバ
本州〜九州では夏鳥。琉球諸島では越冬する。
低山〜山地、谷戸、丘陵地帯の森などに生息する。カエルやヘビなどと捕らえる。
「ピックイーッ」と鳴く。
ヤマシギ
「チキッチキッ」「ブーッブーッ」と鳴く。
頭に黒くて太い横斑が4本あり、とても目立つ。
ギンムクドリ
草地、農耕地、牧場などに生息する。ムクドリの群れに混じる事がある。
「キュルキュル」と鳴く。
オスの頭部は白色。メスは全体的に褐色がかる。
ホシムクドリ
草地、農耕地、牧場などに生息する。ムクドリの群れに混じる事がある。
「キュルキュル」と鳴く。
オスは下面の白斑はV字型で、メスはハート型。
その他、やんばる地域以外でも見たい鳥リスト
シマキンパラ
移入種もしくは留鳥。
飼育個体が野生化しただけでなく、与那国島などのものは東南アジアに生息する個体が自然渡来した可能性がある。
シロガシラ
八重山諸島の亜種シロガシラと、沖縄島の亜種タイワンシロガシラの2亜種。亜種タイワンシロガシラは移入種とされている。
平地に生息する。
「ピョッロピッピュピェ」と囀り、「よっろしくね」と聞きなす。地鳴きは「ジュジュ」「ギュッ」など。
ヒヨドリ(亜種リュウキュウヒヨドリ)
沖縄諸島では亜種リュウキュウヒヨドリは留鳥だが、亜種ヒヨドリが冬鳥として観察される事もあるので注意。
亜種ヒヨドリは「ピー」「キー」「ヒーチュキュチャチュク」などと騒がしく鳴くが、亜種リュウキュウヒヨドリの声はより柔らかい。
亜種リュウキュウヒヨドリは亜種ヒヨドリに比べて羽色がより暗色。
メジロ(亜種リュウキュウメジロ)
亜種メジロは九州以北で留鳥だが、九州以南でも越冬個体がいるので注意。
亜種リュウキュウメジロは亜種メジロより小さく下面は灰白色。亜種メジロの下面は汚白色で脇は淡褐色味を帯びる。
ヘラサギ
河口、干拓地、干潟、湿地などに生息する。
クロツラヘラサギより渡来数は少ない。目先が黄色。嘴の先端は黄色味を帯びる。
クロツラヘラサギ
河口、干拓地、干潟、湿地などに生息する。
目先が黒く、嘴とつながり仮面をかぶったように見える。
ズグロカモメ
干潟、干潟に近い農耕地などを飛び回る。
「キャッ、ピャッ」と鳴く。
ユリカモメに似るが一回り小さい。嘴は黒く、足は赤くやや黒みがかる。ユリカモメの嘴と足は赤か鈍いオレンジ色。
参考文献
やんばるの森 輝く沖縄のいきものたち 写真=久高将和 日本野鳥の会やんばる支部 編
♪鳥くんの比べて識別! 野鳥図鑑670 第4版
鳥の識別を本気でやるならこれ。最新の第4版は掲載種と写真数が増えて更に充実している。
野鳥の名前 安倍直哉 / 叶内拓哉
名前に関するうんちくはこちらで。
漫湖水鳥・湿地センターHP
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